トップ

■令和4年6月定例会 代表質問 質問項目

質問項目

1.ウクライナへの支援について

2.男女共同参画及び共生社会の推進について

3.リニア中央新幹線の品川・甲府間の先行開業について

4.地下水に着目した法定外税の導入について

5.水害時における広域避難に向けた取り組みについて

6.看護職員の育成・確保に向けた取り組みについて

7.自殺防止対策の推進について

8.ウィズコロナ時代における観光振興について

9.特別観光キャンペーンについて

10.史跡甲府城の復元整備について

11.県産水素の普及について

12.高校における消費者教育の推進について

皆 川 は、自民党誠心会を代表いたしまして、今定例県議会に提出されました案件並びに県政一般について質問をいたします。

 まず初めに、新型コロナウイルス感染症により、お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに、感染された皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 県では、今年に入ってから、医師や看護師の健康観察を受けながら、住み慣れた自宅で療養する「やまなしホームケア」や、入院・入所等が決まるまで自宅待機する「ファーストケア」の仕組みを導入してきました。

 これらの運用に携わる方々をはじめ、新型コロナウイルス感染症と懸命に闘い、県民の健康、生命を守っていただいている多くの関係者の皆様に対し、心から敬意を表し、感謝申し上げます。

 さて、数年来の世界的な半導体の品薄、ウッドショックと言われる木材の不足、エネルギー価格の高騰などが幅広い業種に影響を及ぼす中、2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、更なる原材料の調達コストの上昇や不安定化を招いています。

 2年以上に及ぶコロナ禍で疲弊しきった地域経済が、更に深刻な打撃を受けることになりました。

 この回復に向け、国と地方が一丸となって、強力な経済対策を講じるよう尽力することが、政治の責任ではないかと感じております。

 私は、今の、この混乱する時代を、日本の幕末に重ね合わせて見ています。

 江戸幕府の幕臣で、日本海軍の生みの親と言われる勝海舟は、その談話集「氷川清話」の中で、「政治家の秘訣はほかにはない。ただただ誠心誠意の四文字しかない」と語ったと書かれています。

 私は、甲府市議会議員時代を含め35年以上にも及ぶ議員生活の間を、無我夢中で駆け抜けて来ました。

 しかし、勝海舟のこの言葉を思い起こすと、これまでの政治活動において、果たして誠心誠意の行動ができていただろうかと自問自答します。

 まだまだ、県民のために、心を込めて、なすべきことがあるのではないか。

 そのために、私は、地方議会が地方自治の二元代表制の一翼を担っていることを念頭に置き、県議会議員の一員として個々の政策課題に対する責務を全うするため、真摯な議論を展開して参りたいと考えていります。

 我が自民党誠心会は、ふるさと山梨の県民生活の向上を目指し、一丸となって、県政発展に全力で取り組むことをお誓いし、以下、質問に入ります。

 

1

ウクライナへの支援について

皆 川 初めに、ウクライナへの支援について、お尋ねします。

 ロシアがウクライナに侵攻してから3箇月が経過し、未だ収束の兆しが見られず、日々、新聞やテレビなどでロシア軍によるウクライナへの攻撃の様子が報じられ、罪のないウクライナ人、とりわけ多くの子供たちが犠牲になっていることに、大変心を痛めるとともに、こうしたロシアの行為に対し、強い憤りを禁じ得ません。

 今回の出来事は、決して対岸の火事ではなく、こうした危機が我が国のすぐ近くにも存在していることを国民に強く認識していただくとともに、国や国民を守るためにはどうすれば良いのかを真剣に考えるきっかけになったと思います。

 また、私は、多くのウクライナ人が海外へ避難する中、岸田首相が避難民の受入を迅速に表明したことや、先般、国民生活や国民経済への影響があるものの、ロシア産石油の原則輸入禁止を決定するなど、ロシアへの制裁強化に踏み切った政府の対応を高く評価しております。

 ロシアの力による一方的な現状変更は、決して許されるものでなく、県議会でも2月定例会においてロシア軍の即時撤退を求める決議を行いました。

 自民党誠心会においても、一連のロシアの軍事侵攻への抗議とともに、ウクライナに一日も早い平和と安定が訪れることを祈り、議員全員でウクライナ国旗の色である空の青色と、ひまわりや小麦の黄色で彩られたバッジを付けているところであります。

 我が国でウクライナからの避難民の受入が本格化する中、本県においても、市町村や大学、民間団体などが支援を表明するなど、ウクライナ支援の輪が大きな広がりを見せております。

 そこで、まずウクライナ避難民の方に本県で安心して暮らしていただくために、県はどのように取り組むのか、お伺いします。

 また、ウクライナ避難民を受け入れることは、外国人の受入に対する県民の意識を大きく変化させ、外国人を地域社会で受け入れるための環境整備に繋がるものであります。

 そこで県は、避難民を始め、外国人をどのようにして地域社会の中へ溶け込ませていくのか、御所見をお伺いします。

 

 

 

長崎知事 いつ、いかなる状況と場所においても、暴力と、暴力を背景とした解決は絶対に許されません。

 それは、この度のロシアとウクライナとの間に発生した状況に接する以前の、民主主義社会に生きる者が拠って立つべき普遍のルールであり、国境を超えた尊厳の精神であると信じます。

戦禍を経験した、私たち日本と日本人が識るべきは、正義を貫く戦い、正義を回復するための戦い、いずれにあっても、展がる状況は、惨劇を避けては通れないという「歴史の轍」ではないでしょうか。

 いま再びの戦禍に直面し、本県ももちろん、その惨劇を看過・容認することはできません。

 同時に、改めて誓うべきは、支援と救済を求めておられる方々には、なしうる限り手を伸ばし、受け止める環境がなければならないということであると考えます。

 それを、特定の場所や特定の施設にとどまらず、山梨という社会全体で育まなければなりません。

 本県も先日来、ウクライナから避難されてこられた方々が生活を始めておられます。

 受け入れに当たって、周囲や地域の方々が御理解の上であたたかく見守ってくださっておられますことに、この場をお借りして感謝を申し上げます。

 ただ、受け入れるべき、受け止めるべきは、決して戦禍から避難されてこられた方々だけではありません。

 違った文化、風土、価値観のもとから訪れた外国の方はもちろん、同じ日本国内、山梨県内であっても、異なりと違いを前提に、多様な価値観を認め合える地域、社会、県民の姿こそが、山梨という「誉れ」であって欲しい。そのように願う次第です。

 本年から共生社会担当の専門統括官を配置致しました。

 これに加え、おりしも、先月5月31日には、本県において第1回やまなし多文化共生社会 実現構想委員会を開催いたしました。

 これからの山梨において、いかにして地域が社会を育み、社会が地域、そして人間そのものにも寛容でありうるべきなのか。

 山梨で生きる人々が、違いを認めあうことの上に、それぞれが幸福と豊かさを感じることができる。本県は、その大きな到達点に向けて、既に具体化の過程に入っております。

 この過程にあって、私自身が先頭に立つべきとの気概と決意で、来たるべき多文化共生社会の実現につなげるべく、ウクライナからの避難者を迎えた本県の経験を、施策としてかたちにして参りたいと考えております。

 ロシアとウクライナをめぐる情勢には、議会の皆様、県民の皆様とともに大変に強く憂慮し、心を痛めております。

 それゆえにこそ、この悲しみが、いずれ社会全体での安寧と、更には喜びに転じるように、特殊・特異な状況への対処にとどまることなく、我が山梨県が、慈しみに対して強い感受性と、深い寛容さを育むきっかけとすべきと考えます。

 本県が目指すべき姿は、国家の争いにおいて是非を判定することではなく、むしろその先を見据え、国境や境遇を超えた共存の価値を構築することと考えます。

 そこへの施策前進こそが、平和という誰もが希求する生活を守り、本県がなしうる積極的な平和貢献策であると、そのように考える次第であります。

2

男女共同参画及び共生社会の推進について

皆 川 次に、男女共同参画及び共生社会の推進について、お尋ねします。

 まず、男女共同参画の推進についてであります。

 誰もがその人権を尊重しつつ、一人ひとりが持っている個性や能力を十分に発揮できる豊かな社会の実現のためには、男女共同参画や女性活躍の推進は大変重要であると考えます。

 現在の日本では憲法に男女平等がうたわれているにもかかわらず、政策・意思決定過程への女性の参画率の低さ、男女間の賃金格差、育児・家事へ参画する男性割合の低さなど多くの問題があり、日本の男女共同参画社会の実現は、未だ道半ばにあると言えます。

 本県においても、条例や計画に基づき様々な施策を推進しているところでありますが、県で行ったアンケート調査では「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」などという固定的な性別役割分担意識が依然として存在しています。

 また、新型コロナウイルスの感染拡大は、特に非正規雇用労働者の多い女性の雇用や収入に強い影響を与えたほか、配偶者等からの暴力や性暴力を深刻化させている状況です。

 このような中、県では、本年3月に「第5次男女共同参画計画」を策定しました。

官民連携による推進などの新たな視点を加え、成果目標も、実施する施策の成果に直結するようなものに見直すなど、大変実効性の高い計画になっていると評価しているところです。

 

 

 そこで、県ではこの計画に基づき、男女共同参画の推進にどのように取り組んでいくのか、お伺いします。

 次に、共生社会の推進についてであります。

 我が国の人口構造は、2040年に高齢者人口がピークを迎えるとともに、生産年齢人口の減少が予測されております。

 本県も決して例外ではなく、産業や地域を支える「人」の重要性が増す中では、男女共同参画に留まらず、年齢、障害の有無、国籍など多様な価値観を認め合い、誰もが自らの能力を発揮し 社会をみんなで支えていく、いわゆる共生社会の実現が大変重要な課題であると認識しております。

 県は、本年4月に、男女共同参画と共生社会の実現の一層の推進に向けた体制強化を図るため、新たに「男女共同参画・共生社会推進統括官」を設置しました。

 山梨の将来を展望するに当たって、柔軟に対応されたものであり、新たな体制のもと、県民誰もが自分らしくいきいきと暮らし社会の担い手として活躍できる環境整備が更に加速していくものと期待しております。

 そこで、県では共生社会の実現に向けて、今後どのように取り組んでいくのか、御所見をお伺いします。

 

長崎知事 コロナの収束を見据えたアフターコロナへの移行、ウクライナ情勢や国際社会の動向、あるいはIT技術の急激な進歩など、我々を取り巻く環境は大きな変容を遂げ、もはや予測不可能な時代に突入しています。

 こうした中、私たちが目指す県民一人ひとりが豊かさを実感できるやまなしの実現のためには、本県を多種多様な人材が集う場所とし、衆知を結集することで、地域全体で成長を続けていく事が重要です。

 そのための環境づくりとして、年齢や性別、国籍、障害の有無等に関わらず、全ての方をコミュニティーの一員として受け入れ、コミュニティーを構成するメンバーとして活躍していただく    男女共同参画社会・共生社会の実現は本県の将来を左右する極めて重要な課題であります。

 まず、男女共同参画の推進に当たっては、議員御指摘のとおり、ジェンダーギャップの解消が進んでいない状況があることから、第5次計画では新たに2つのアプローチにより施策の推進を図ることとしています。

 1点目は、拠点機能を強化した施策の推進であり、若年層への意識啓発や女性リーダーの育成、相談機能の充実強化を3つの柱として、男女共同参画推進センターを中心に取り組みを強化して参ります。

 2点目は、県と関係団体等が緊密に連携した男女共同参画の推進であり、新たな取り組みとしてセンターの各拠点において、意見交換やフリートークを行う交流サロンを定期的に開催して参ります。

 なお、交流サロンについては、このほど県が男女共同参画推進の専門人材として委嘱した国立女性教育会館理事長の萩原なつ子氏の御支援の下、先月末から事業をスタートさせたところです。

 次に、共生社会の実現に向けては、これまでも年齢や性別、国籍など様々な分野で取り組みを進めておりますが、更なる分野間の連携により相乗効果を創出していくことが非常に重要であります。

 このため先般、知事をトップに各部局長等が構成員となる「男女共同参画・共生社会推進本部」を設置し、全庁横断的な共生社会の推進体制を整えたところです。

加えて、共生社会を総合的に推進するための指針を年度内に策定することとし、様々な施策の方向性を明確にするとともに、県民の皆様に共生社会の理念の浸透を図って参ります。

 

3

リニア中央新幹線の品川・甲府間の先行開業について

皆 川 次に、リニア中央新幹線の品川・甲府間の先行開業について、お尋ねします。

 リニア中央新幹線は、JR東海により、現在、品川・名古屋間の開業に向け建設が進められており、県内においてもトンネル工事のほか、釜無川橋梁などの目に見える区間での工事も始まっています。

 本県は、実験線建設など、当初からJR東海の整備に協力するとともに、現在も用地取得業務を受託し地元調整等にも積極的に関与し、早期開業に向けて努力しております。

 また、リニア中央新幹線の開業は、県内経済の活性化や県民生活に豊かさをもたらす絶好の機会であることから、県、市町村をはじめ、県民各界各層において、その果実を享受するための様々な準備が鋭意進められているところであります。

 一方、大井川水問題に起因し、南アルプストンネルの静岡工区の着工見通しが立たず、開業時期が大幅に遅れるのではないかと仄聞します。

 この点について、JR東海が今般新たに示した東京電力の発電用水一部抑制方式は、膠着した局面を打開する可能性を持つのではないかと、期待を抱かせるものであります。

 しかし、それでもなお、まだ、多くの関係者との調整が必要で、紆余曲折があることも想定する必要があり、このまま時間ばかりが経過してしまうようであれば、全線開通への機運を盛り上げる一助として、品川・甲府間の先行開業について、議論していく必要があるとも考えます。

 本来、品川・名古屋間、更には大阪までがリニアで結ばれることが開業効果を最も大きくすることは言うに及びませんが、本県にとっては品川・甲府間の先行開業であっても、東京への移動時間が飛躍的に短縮されることになります。

 私は、この東京方面への移動時間短縮効果により、山梨は東京への通勤圏となることが確実であり、移住者の増加も期待でき、何よりも人の往来の増加による県内経済への波及効果は計り知れないものがあると考えます。

 そこで、先行開業を論じるに当たり、起点である品川駅の整備状況及び山梨新駅の整備について、県の認識をお伺いします。また、併せて先行開業に対する知事の御所見をお伺いします。

 

 

長崎知事 品川・甲府間の開業が実現すれば、議員御指摘のとおり、本県と東京との時間距離が飛躍的に縮まり、移住者の増加や人の往来による県内経済への波及など、本県にとって大きな県民益をもたらすことが期待できます。

 一方、先行開業の前提となる甲府までの完成と、甲府以西の完成時期の差がどの程度生ずるのかが現時点で明らかにされておりません。

 更に、車両の整備施設や運行管理システムなどの ハード、ソフト両面でJR東海には追加整備が必要になって参ります。

 このような先行開業の実現に当たってのいくつものハードルを乗り越えていくためには、本事業が国家的プロジェクトに位置付けられ、事業主体がJR東海であることを考えますと、本県としての努力はもちろん、国の応援とJR東海の理解が不可欠であります。

 先日公表いたしました本県における空港整備の可能性に関する研究会の設置も、これらを得るための一環として、全国的な航空交通網整備への貢献とリニア利用客の増加を図るための一つのアイデアの提案でありますが、先行開業の実現に当たっては、こうした様々な布石を打っていく必要があると考えております。

 なお、品川駅及び山梨新駅の整備状況につきましては、JR東海によると品川駅は既に工事に着手し、山梨新駅についても必要となる用地の大半が確保され、現在は駅の設計を進めているとのことであり、着々と整備が進められているものと認識しております。

 

4

地下水に着目した法定外税の導入について

皆 川 次に、地下水に着目した法定外税の導入について、お尋ねします。

 現在、県内経済を取り巻く環境につきましては、ウクライナ情勢による原油・原材料の価格高騰が、今後の県民生活や県内経済活動に影響を及ぼすことが懸念されるなど、その先行きに不透明感が増しているところであります。

 このような不安材料を抱える県内経済の中にあっても、今後も引き続き好調な動きを見せていくものと思われるのが、県内に事業所を有するミネラルウォーター事業者であります。

一般社団法人日本ミネラルウォーター協会によりますと、本県のミネラルウォーター生産量は、令和2年に約155万キロリットル、令和3年には約158万キロリットルと、安定的に推移しております。

 更には、同協会の調べによれば、我が国におけるミネラルウォーターの一人当たりの消費量も年々伸びており、コロナ禍における家庭内の需要と相まって、国内の消費量ひいては本県の生産量は、今後も着実に伸びていくものと思われます。

 このような点から考えましても、本県が直面する厳しい財政状況下で安定かつ確実に自主財源を確保していくためには、本県での事業活動で利益を得ている地下水の利用に対する課税は極めて重要であると考えます。

 私は、常々、本県山梨の豊かな自然が生み出す清らかな「水」によってもたらされる事業者の利益が、県民に対して当然に還元されるべきとの強い思いを抱いており、県議会においても、これまで「地下水に着目した法定外税導入に関する政策提言」により、導入に向けた検討を県に対してお願いしてきたところであります。

 県議会による政策提言に端を発して県が設置した「山梨県地方税制等検討会」における検討結果につきましては、本日、追加報告があり、執行部から報告内容の説明を受けたところであります。

 そこで、県では、その内容を踏まえ今後どのような取り組みや検討を行っていくのか、お伺いします。 

 

 

長崎知事 本日、県議会からいただいた政策提言を踏まえて設置した有識者による検討会の検討結果を報告いたしました。

 報告書では、仮に制度を導入する場合の税の在り方について論じておりますが、そもそも、税の導入の是非と言った政治的な判断は、検討会における議論の射程の範囲外となっております。

 今回の検討は、議会からの政策提言に基づくものであり、執行部としては、有識者が整理した論点に対する議会の考えもお伺いしながら、今後の対応を検討して参りたいと思います。

 その際、検討を更に進める場合においては、報告書で示されている課題や留意事項について、十分踏まえていく必要があります。

 特に報告書では、「そもそも、租税は、公共サービスの資金調達のために、私有財産の一部を強制的に行政の手に移す手段であることから、新税の導入の是非については、一般に、行政として、新税以外の歳入歳出両面における最大限の努力を尽くした上で、広く県民の理解を得るための議論が不可欠である」との指摘を受けております。

これまで、国庫補助や有利な地方債の活用といったレバレッジの効いた予算編成を行っており、歳出については、徹底した選択と集中により、最小の県負担で最大の事業効果を上げるべく、努力を重ね、一定程度、実現してきたところです。

 一方、歳入確保につきましては、県企業局の収益増加やふるさと納税など、様々な取り組みを行っているところでありますが、道半ばであり、更なる努力が必要です。

特に、これまで極めて低い価格で貸し出されてきた県有地の貸し付けを適正化していくことは、議員御指摘の「安定かつ確実に自主財源を確保していく」ために講ずる諸施策の大前提となることから、御指摘も踏まえ、引き続きしっかりと取り組んで参ります。

 いずれにしろ、私としては、「安定かつ確実に自主財源を確保していく」ことに関する皆川議員をはじめとする議会の御尽力に最大限の敬意をもって向き合うものであり、今後も県の歳入確保に向け最大限の努力を傾注して参ります。

 

皆 川 議会の議決と検討会の意見とを重く受け止められているようで、県議会の意見を十分聞きながら、これから最大限導入に向けて努力を重ねていただけるという知事の答弁は非常に前向きでありがたいと思っております。

 一点ですが、県が既に持っている資産・資源等を有効活用することによって大きな利益を得られるということを答弁しているわけですが、県の現在ある資産・資源という中に、県有林はもちろんですが、地下水も重要な県の資源のひとつだと思います。

 その点を全く同列に考えてもらい、県有林の活用と同じように県の水資源も活用してもらえるのではないかという気がしておりますので、その点をお聞きしたい。

 

総務部長 先ほどの御指摘は全くそのとおりであり、非常に貴重な御意見だと思っております。

 今回の検討会の報告書において、仮に導入する場合の制度として「地下水の移出行為」に対する課税が望ましいという集約に至って、かつ課題や留意点なども示されているところでございます。

 この案の、課税の考え方の一番冒頭には「県民が長い歴史の中で守ってきた自然環境により育まれた地下水は、生命の源と言える貴重な資源である」という考え方が検討会の報告書にも記載されておりますので、今の御指摘はここに相通ずるところがあろうかと思います。

 私共としても、今おっしゃっていただいた御指摘も踏まえながら、今後、議会の御意見を丁寧にお伺いしながら、対応を検討して参りたいと思います。

 

5

水害時における広域避難に向けた取り組みについて

皆 川 次に、水害時における広域避難に向けた取り組みについて、お尋ねします。

 近年、気候変動等の影響により災害が激甚化・頻発化しており、本県にも大きな被害をもたらした令和元年10月の台風19号をはじめ、令和2年7月の豪雨など、これまでの想定を超える災害が全国各地で毎年のように発生しております。

 特に、令和2年7月の記録的な豪雨では、九州地方を中心に深刻な被害をもたらし、熊本県の球磨川が氾濫した状況は、連日、マスコミによって報道され、その被害の甚大さに私も大いに心を痛めました。

 本県は、四方を山々に囲まれた降雨が集まりやすい盆地地形であり、球磨川の氾濫により最も被害を受けた人吉市と甲府盆地の地形が酷似していることから、球磨川同様、日本三大急流の1つである富士川の氾濫により、相当規模の災害の発生が懸念されます。

 また、我々自民党誠心会では、昨年12月に、4年前の西日本豪雨において大きな被害を受けた広島市の復興状況を調査して参りましたが、改めて、大規模水害対策の重要性を再認識したところであります。

 災害発生時に身を守るためには、まずは、県民一人ひとりが、平時から水害のリスクを把握し、市町村が設置した避難所への避難や、安全な親戚や友人宅への避難、自宅が安全な場合は自宅に留まることなど、いくつかの選択肢の中から事前に最適な避難先を検討しておくことが重要となります。

 加えて、先般の新聞報道によれば、富士川水系で大規模な水害が発生した場合、浸水が想定されるエリアは14市町、約35万人に影響が及ぶ恐れがあるとのことから、市町村域を越えた広域避難の検討も求められます。

 令和元年の台風19号の際、他県において広域避難を行った事例がありますが、自治体が避難指示を出した直後の時間帯に移動する住民が集中したため、交通渋滞が発生し、避難場所までの移動に時間を要したと聞いております。

 現在、気象庁から伝達されてくる情報や河川の水位などの状況に応じて、各市町村が高齢者等避難などの避難情報を発令していますが、広域避難のためには、自治体の早めの判断とそれに基づく住民の早めの行動が必要となります。

 こうした中、県では、県内市町村等と広域避難に関する検討を進めていると承知しておりますが、その取り組みについて、お伺いします。

 

長崎知事 大規模な水害に対応するには、市町村の区域を越えた広域避難が必要となる場合もありますが、移動距離が長くなるため、避難に時間を要するなどの課題が指摘されています。

 このため県では、国や県内全ての市町村と広域避難に関する検討を重ね、本年3月に広域避難の情報発信を行う際の判断目安を取りまとめ、本年度から運用することといたしました。

この中で、水害発生の恐れがある場合における県と市町村等による共同検討会を設置するとともに、市町村が住民に避難を促すタイミングを、水害の発生が予測される48時間前から段階を追って示しています。

 また、広域避難を円滑に実施するためには、避難を要請する側と受け入れる側で、市町村間による避難先の協議を迅速に進めることが肝要となります。

 しかしながら、複数の市町村が同時に広域避難を実施する場合は、この協議が難航し円滑な実施に支障を来すことも懸念されます。

 このため県では、先月19日に県内全ての市町村と協定を締結し、県がハブとなって積極的に避難先を調整する仕組みを構築したところであります。

更に本年度は、市町村とともに住民への情報伝達や避難場所までの移動手段・誘導方法など、具体的なオペレーションについて検討を進め、逃げ遅れゼロの実現を目指し鋭意取り組んで参ります。

 

6

看護職員の育成・確保に向けた取り組みについて

皆 川 次に、看護職員の育成・確保に向けた取り組みについて、お尋ねします。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大から2年以上が経過したものの、依然として感染者の発生が続いております。

 このような中、看護職員は医療機関等において通常の医療に従事しながらも、日々、感染者への対応に当たっており、県内の医療提供体制の確保のために大変重要な役割を担っていただいております。

 また、医療機関や高齢者施設等で感染者が発生した場合には、感染症に精通した看護職員が迅速に現地に赴いて感染拡大防止のための指導・助言を行っております。

更に、高齢化等の進展に伴い、医療分野だけではなく介護分野においても看護職員の役割は高まっていることから、引き続き看護職員の育成・確保は極めて重要な課題であります。

 しかしながら、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、心身の不調を訴える看護職員や、感染又は自宅待機により出勤できない看護職員の増加などにより、労働環境はますます厳しさを増していると伺っております。

 また、昨年9月、富士吉田市議会において、同市立看護専門学校について、近年、入学者数が定員に満たないことや、財政負担が大きいことなどを理由に、閉校を前提に今後の在り方の検討を進めていくことが明らかになりました。

 卒業生の多くが地元の市立病院や県内の病院に勤めるなど地域医療を支えてきただけに、県内全体への看護職員の人材確保についての影響も危惧されるところです。

これまで、本県の看護職員については、地域医療構想との整合性や働き方改革の進展を踏まえ、令和元年度に策定した看護職員需給計画に基づき育成・確保を行ってきたところですが、これまで述べてきたように、看護職員を取り巻く環境は大きく変化しております。

 そこで、今後の看護職員の育成・確保に向けて、県ではどのように取り組んでいくのか、御所見をお伺いします。

 

 

長崎知事 県ではこれまで、県看護協会や看護師養成学校等と連携し、看護職員を目指す学生の掘り起こしを進めるとともに、修学資金の貸与等を通じ看護職員の育成・確保に取り組んで参りました。

 しかしながら、議員御指摘のとおり看護職員を取り巻く環境が大きく変化していることから、改めて将来の看護職員の需給推計を行うため、医療機関等に対し必要な看護職員数や雇用の実態に関する調査を実施することとし、所要の経費を6月補正予算に計上いたしました。

 なお、調査結果については詳細な分析を行い、本年度、看護職員の育成・確保に向けて、県医師会や県看護協会、看護師養成学校等の関係者を招へいして設置する検討会の議論に生かして参ります。

 また、感染対策の強化のため感染管理認定看護師を確保していくことが必要となりますが、資格を取得するためには、県外の教育機関での約1年間の研修期間が受講者や職場に大きな負担となっております。

 こうしたことから、令和5年の春を目途に県立大学に感染管理認定看護師の教育課程を開設することとしており、本年度中には日本看護協会から認定教育機関としての指定を受けるための準備を進めております。

 このような取り組みを通じ、引き続き関係機関と連携しながら、本県の医療を支える看護職員の育成・確保に鋭意努めて参ります。

7

自殺防止対策の推進について

皆 川 次に、自殺防止対策の推進について、お尋ねします。

 本県の自殺者数は、住所地ベースで集計された厚生労働省の「人口動態統計」によりますと、令和3年は127人であり、人口10万人あたりの自殺死亡率は、16.1人となっております。

 自殺者数は、減少傾向にあるものの、過去10年間の平均自殺死亡率は、全国17.8人に対して、本県は18.4人と高い水準にあり、自殺死亡率は毎年、全国の中でも中位から上位で推移しております。

 また、先月には芸能人の自殺という痛ましい報道が相次ぎました。

 多くの方々が、自ら命を絶ったことについては、胸が締め付けられる思いであります。

 県ではこれまでも、自殺者の減少に向けた様々な対策を行っていることは承知しておりますが、これまでの対策は、24時間電話相談や青木ヶ原樹海周辺での声かけなど、いわゆる水際での取り組みが中心でした。

 自殺は、健康問題や経済・生活問題等の様々な要因が複合化した結果として発生するといわれております。

 終わりの見えない新型コロナウイルスの影響は、人と人とのつながりを希薄にさせ、地域のコミュニティは閉鎖的になりつつあります。

 職場や学校、地域での人との関わりが減少することで、あらゆる世代の方が孤独感にさいなまれ、自殺リスクが高まるのではないかと推察されます。

 こうした中、県では自殺防止に向けてより効果的な対策を講じるため、自殺要因の調査・分析を行い、先般、調査結果を公表したところであります。

 調査結果では、社会性、構造的な面からの取り組みとして、社会との緩やかなつながりの形成や、良質で安定的な雇用の確保を図ることが必要であるとされております。

 また、自殺のきっかけとなった個別要因に対する取り組みとして、虐待防止やいじめ等の早期察知、自殺未遂者への支援体制の強化等が必要とされています。

 そこで、県では調査結果を踏まえ、自殺リスクの低い社会の実現に向け、どのように取り組んでいくのか、お伺いします。

 

長崎知事 れまでの自殺対策は、「個人の特別な事情であるが故、対処困難」との先入観のもと、水際対策を中心とする取り組みに留まっておりました。

 しかしながら、今回の調査結果を踏まえ、「そもそも自殺を決意せざるを得ない状況にならないよう」より上流での対策、社会政策的なアプローチに取り組むことといたしました。

 そこで、自殺リスクの低い社会の実現に向けて、部局横断的に施策の検討を行い、「ささえる」「つながる」「うるおう」の3つの視点から、関連する14事業に要する経費を6月補正予算に計上いたしました。

 まず、1つ目の「ささえる視点」でありますが、自殺リスクのある方を支える社会の仕組みづくりの取り組みとして、

・中学生・高校生を対象としたユースゲートキーパーの養成

・いじめ、不登校等の悩みを抱える児童生徒やDV被害者の方々に対し、身近な相談窓口の利用の促進

・ひきこもり状態にある方への継続的な支援を行うため、民間支援団体への助成制度の創設

 などを実施して参ります。

 次に、2つ目の「つながる視点」でありますが、人と人とのゆるやかなつながりを形成する取り組みとして、

・男性介護者の孤立防止に向け、介護者と支援者の集いやケアマネージャーによる企業訪問の実施

・複数人で集まって継続的にスポーツを行う「スポーツ無尽」の推進

などを実施して参ります。

 最後に、3つ目の「うるおう視点」でありますが、良質で安定的な雇用の確保に向けた取り組みとして、先般、労使双方をはじめとする幅広い関係者が集う「豊かさ共創会議」を立ち上げたところであり、労使がともに「共益関係」を育み「成長と分配の好循環」を実現するため、時代環境に即した人材育成のための調査などを実施して参ります。

 これらに加え、更なる効果的な施策を実施するため、自殺未遂者が自殺企図に至った背景や要因などを継続して調査し、より詳細な分析を実施していきます。

 また、これらの調査結果や県の施策を広く周知し、自殺防止対策に携わる方はもとより、多くの県民の方から意見を伺うなど、官民連携した取り組みを推進していきます。

こうした取り組みを通じ、自殺を考えないですむような地域社会への体質改善を図り、ここ山梨において、自殺という悲劇を県民にもたらすことがないよう、強い決意をもって取り組んで参ります。 

8

ウィズコロナ時代における観光振興について

皆 川 次にウィズコロナ時代における観光振興について、お尋ねします。

 長期にわたるコロナ禍において、感染拡大の波は繰り返され、その都度、全国的な人流抑制や行動制限が行われたことにより、人の移動によって成り立つ観光産業は、甚大な影響を受けてきました。

 統計データによると、令和2年の観光入込客数は対前年比48.7パーセント、観光消費額は対前年比64.1パーセントと大きく落ち込み、特に、これまで増加傾向にあった外国人延べ宿泊者数は対前年比17.4パーセントと激減しております。

 こうした中、県では、いち早く感染対策と経済活動の両立を目指すグリーン・ゾーン認証制度を創設するとともに、感染症対策に必要な備品の購入に要する経費への支援など、安全・安心な環境を提供する「感染症に強い観光地づくり」に官民一体となって取り組まれてきました。

 併せて、国の施策と連動した宿泊割などの事業により、足元の旅行需要を喚起してきたことは、苦境に立つ観光産業の大きな支えとなってきたものと承知しております。

こうしたことにより、令和3年の宿泊旅行統計調査の速報値によると、県内の日本人の延べ宿泊者数は前年より16.2パーセント増え、伸び率では全国で1位になるなど、県の取り組みの成果が現れているものと評価しているところです。

 また、本年のゴールデンウィークにおいては、県内外からの観光客で賑わいをみせ、県が実施した調査では、期間中の一日当たりの観光客数は、前年の1.8倍となっており、観光需要回復の兆しが見え始めてきたと実感しております。

 更に、国では、今月から外国人観光客の入国制限が緩和され、円安を追い風として、インバウンド観光も急速に再開する動きをみせており、この機を逸することなく、積極的に観光振興を進めていくことが重要であると考えます。

 しかしながら、今なお全国で一日あたり1万人ほどの感染者が報告され、新たな変異株が発見されるなど、第7波あるいはその先の懸念もあることを忘れてはならないと思います。

 そこで県では、ウィズコロナ時代における観光振興にどのように取り組んでいくのか、御所見をお伺いします。

 

長崎知事 県では、コロナ禍以前から、将来の人口減少社会に備え、限られた観光客からより大きな収益が得られるよう、観光産業の高付加価値化に取り組んできたところであります。

 この施策方針は、コロナ禍で観光客が激減する中、より優先度が高まることとなったものであり、ウィズコロナ時代におきましても、観光施策の基本に据えて参りたいと考えております。

 今後とも、プレミアムツアーの造成促進や、滞在コンテンツの向上など、観光産業の高付加価値化に向けた取り組みを更に充実させて参ります。

 また、コロナの先の超感染症社会を見据えて導入したグリーン・ゾーン認証制度は、その安心感が誘客に大きな効果を発揮しており、更に上位認証を新たに設け、国際的な評価の獲得にもつなげて参ります。

 加えて、再開が見込まれるインバウンド観光につきましては、ターゲットを見極めた的確なプロモーション活動や、本県へのツアー造成促進などにより、スタートダッシュを切るべく準備を進めて参ります。

 また、コロナ禍で明らかとなった旅行市場の変化や本県観光産業の課題を踏まえ、県の観光施策を取りまとめた観光推進計画を見直すこととし、有識者の意見もいただきながら、本年度末までに改定して参ります。

 今後とも、重要性の増した本県観光産業の高付加価値化を一層推進するとともに、インバウンド観光再開による観光産業の躍進の機会を的確に捉え、ウィズコロナ時代における観光振興に積極的に取り組んで参ります。

9

特別観光キャンペーンについて

皆 川 次に、特別観光キャンペーンについて、お尋ねします。

 新型コロナウイルスの感染状況がある程度の落ち着きをみせ、人の移動制限が緩和される中、県内観光産業の振興を図るためには、回復基調が見られる国内の観光需要をいかに取り込むかが重要であります。

 こうした中、先月26日に、知事とJR東日本八王子支社長が共同記者会見を行い、本年7月から9月までの3箇月間、本県をJR東日本管内の重点販売地域として集中的に誘客促進を図る特別観光キャンペーンの具体的な内容が発表されました。

 首都圏を含む東日本を営業管内とし、多くの人々に対して情報発信することができるJR東日本と共同で誘客活動に取り組むことは、大変効果的であると思います。

本県の夏は、日本一を誇る桃やブドウが旬を迎え、燦々と輝く太陽のもと県内各地で豊かな自然を生かした野外体験を楽しむことができ、本県の魅力を知ってもらうためには最高の季節であります。

 こうした山梨の夏の魅力を最大限活用し、多くの観光客を惹き付けることを期待しておりますが、そのためには県、市町村、民間が連携して取り組むことが重要であると考えます。

そこで、県では、この特別観光キャンペーンをどのように実施していくのか、お伺いします。

 

観光文化部長 本県の魅力を最大限に体感できるこの夏の特別観光キャンペーンは、回復基調にある国内やインバウンドの旅行需要を取り込む絶好の機会であります。

 このため県では、県下全市町村、JR東日本、観光関係事業者にJR東海を加えて、「山梨県特別観光キャンペーン推進協議会」を設立し、オール山梨体制で取り組んで参ることとしております。

 まず、JR東日本には、管内の主要駅におけるポスターの掲示や車内などでのキャンペーン動画の放映、臨時の直通列車の運行などにより、山梨への誘客を強力に推進していただくこととなっております。

 また、受入側の対応として、現在、協議会メンバーが一体となり、本県の夏の魅力を素材とした特別感のある観光コンテンツの造成や効果的なPR展開などについて準備を進めているところであります。

 例えば、本県の魅力である「癒やし」「食」「アクティビティ」をテーマとしたスポットを巡るデジタルスタンプラリーを実施するなど、山梨で特別な夏を過ごしていただく仕掛けを企画し、長時間滞在と観光消費を促すこととしております。

 こうした取り組みを一過性のものとせず、キャンペーン終了後の観光振興の取り組みの中で活用することにより、観光産業の持続的な発展につなげて参ります。

 

10

史跡甲府城の復元整備について

皆 川 次に、史跡甲府城の復元整備について、お尋ねします。

 平成31年2月に国史跡に指定された甲府城は、東日本最大の織豊系城郭であり、近世日本の政治・軍事の歴史を知る上で重要な拠点城郭として、学術的に高い評価がなされております。

 また、近世の平山城として、独立丘陵の一条小山の最頂部にある本丸や天守台を中心に、階層的に配置された複数の曲輪は美しく、総石垣造りで取り囲んだ各々の曲輪からなる城跡は、全国的にみても有数の規模と景観美を誇ります。

 中でも、本丸や天守台、稲荷曲輪周辺に良好に残る築城期の野面積み石垣は、大小の自然石をダイナミックかつ繊細に積み上げたものであり、織豊系城郭特有の石積み技術を持つ穴太衆が関わったとされ、往事の荘厳な景観を今に伝えております。

 更に、城の北東に近接する石垣石材を切り出した愛宕山石切場跡は、城内にある石切場跡とともに、城と石材供給地点が近接して残る事例として全国的にも珍しく、甲府城跡の大きな価値の1つであります。

 こうした甲府城ならではの特徴を最大限明らかにし、来訪者が往時の城の景観を体感しながら、本物を感じ価値を共有できるよう整備をすすめ、観光資源として積極的に活用することが、周辺地域の活性化につながるものと考えます。

私はこれまで、甲府城の整備では、特に情緒あふれる城下町の風情を再現することができる内堀の復元整備を早急に進めることを提案して参りました。

県では昨年の県議会において、内堀の整備にあたっての方法や範囲等については、整備基本計画に位置づけると答弁していますが、大切なのは、こうした史跡の整備がしっかりと進められることであります。

 以前には、甲府城の天守閣復元などを求める10万人を超える署名がなされ、多くの県民の期待が膨らみました。

 また、文化庁では、石垣のみが残る城跡での天守閣復元などを想定し、当時の構造がわかる正確な資料がなくても、歴史的建造物の復元を許可する新基準が運用されています。

 この基準では、調査を尽くしても資料が十分に揃わない場合には「復元的整備」として、従来の「復元」とは区別し、その旨を明示することで再建が可能となっています。

 そこで、この基準を踏まえ、甲府城の天守閣復元をどう進めていくのか、お伺いします。

 また、本年3月に県が策定した「史跡甲府城跡整備基本計画」に基づき、内堀や愛宕山石切場跡などの整備を今後どのように進めていくのか、お伺いします。

 

観光文化部長 まず、復元的整備につきまして、国の定める基準では、歴史的建造物の具体的な規模・構造・形式等を専門家により多角的に検証することが、遵守すべき整備の手順として定められています。

 しかしながら、現在のところ天守閣を多角的に検証するための、絵図や古写真といった資料が一切発見されていないため、今後も史跡の整備を進めながら調査研究を継続し、復元的整備の可能性を探って参ります。

 次に、内堀や愛宕山石切場の整備につきましては、整備基本計画において最優先で取り組む必要のある項目として、本年度から5年間の短期整備計画に位置付け、着実かつ効果的に行うこととしております。

 内堀につきましては、現存する堀の南西区域約800平方メートルの発掘調査に今月から着手したところであり、遺構の残存状況や構造を明らかにしながら復元を行います。

 また、内堀南側は、水辺と石垣が織りなす甲府城ならではの特徴を視覚的に体感できる場所であることから、ベンチや説明板の整備を行うなど、人々が集い豊かな時間を過ごせる場所としての活用も図って参ります。

 一方、愛宕山石切場跡につきましては、石切場の特徴を分かりやすく、かつ安全に公開するため、本年度は支障木伐採や窪地の堆積物を除去するとともに、今後順次、発掘調査などを行って参ります。

 こうした整備を進め、史跡の価値を確実に保護し継承していくとともに、観光資源としても活用し、観光産業の発展を通じた地域活性化につなげて参ります。

 

皆 川 先ほどの答弁は10年前と同じで、少しも進歩していない。

 文化審議会から「史跡等における歴史的建造物の復元等に関する基準」が出ています。

 文化審は、今までの復元と復元的整備を分け、石垣しか残らない城跡の天守閣などの再現を想定し、史跡の魅力を高め観光資源として活用する狙いがあって、こういう答申を出しているわけです。

 資料が十分に整わない場合にも、史跡等全体の保存及び活用を推進できることが前提になっています。

 詳細な図面が発見できないから復元できないと、10年前と変わらない同じようなことを言っているのはおかしい。

 観光文化部は文化審の新しい基準を無視していることになる。

 天守閣復元整備について、進める気が全くないのか、少しは研究を進歩させていきたいと思うのか、伺います。

 

観光文化部長 議員御指摘のとおり、文化庁の新基準では、復元と復元的整備との2つに分けて基準が示されてございます。

 復元的整備につきましては、往時の歴史的建造物の規模や構造などの一部について調査を尽くしても資料が十分に揃わない場合に、発見されている資料等を元に多角的に検証して再現することとされてございます。

 甲府城の天守閣につきましては現在のところ、その存在を示す資料等が一切発見されていないものでございますから、新基準に定められた復元的整備の要件を満たしていないということでございます。

 このため、引き続き調査研究を継続していきますが、資料収集に向けて可能な限り、一大キャンペーンというものを展開して、積極的な資料収集に努め、復元的整備の可能性を探って参りたいと存じます。

 

皆 川 甲府城の復元整備について、一切証拠がないと言っていますが、以前は詳細な絵図面がないから駄目だと言っていました。

 詳細な絵図面のほかに天守閣の下から金のシャチホコ瓦が出てきて、いろいろなものが出てきています。証拠となるものが出てきているのに一切ないなんて、よく言えるなと思います。今まで何を聞いていたのか。それでいて前向きにやると言うがどう積極的にやるのか。

 文化審議会の意向を無視しています。審議会が何故こんなことを言い出したのかというと、観光と結びつけて現在ある城を復元させるため。観光のために城を造って大勢の観光客を呼び集めるためにやっているわけです。そういう姿勢がない。ほかの県は天守閣を復元して、1日10万円くらい取ってそこに客を宿泊させているところもあります。外国はたいてい古いお城はホテルになっています。

 なぜそんなに拘るのか。そのために新しい基準を設けたのですから、もっと基準を勉強してもらい、文章を解釈するだけでなく、実態をしっかり把握してもらいたい、勉強してもらいたい、それを要望して終わります。

 

観光文化部長 甲府城天守閣につきましては、そこに存在するかしないか、存在しなかったとも存在したともいえないということで、その存在を示す資料が見つかっていないという状況でございます。

 そしてこの復元的整備につきましては、そうした資料の一部について調査を尽くしても揃わない場合に、発見されている資料等を元に多角的に検証することで再現することができるとされているところでございます。

 このため、県といたしましては、キャンペーン展開をすることで、積極的に資料の収集に努め、復元的整備の可能性を探って参りたいと考えております。

 

11

県産水素の普及について

皆 川 次に、県産水素の普及について、お尋ねします。

 本年4月、国連の気候変動に関する政府間パネルが新たな報告書を公表し、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えるためには、温室効果ガスの即時かつ大幅な削減が必要であり、一刻の猶予もないと指摘しており、世界各国において政策強化がなければ、温暖化の進行により、各地で激しい自然災害が起こり、経済活動にも著しい支障を与えると警鐘を鳴らしています。

 加えて、ロシアのウクライナへの侵攻によって、世界のエネルギー事情が一変し、各地において目の前にあるエネルギー不足への対応が最優先となっていることから、今後、脱炭素化の流れに反し、一時的に化石燃料への依存が高まることも予想されます。

 我が国のエネルギー自給率は12パーセントにとどまっており、欧米各国に比べると著しく低く、原油や天然ガス等のエネルギー資源が乏しく、その殆どを海外からの輸入に頼らざるを得ないことから、世界における情勢変化の影響を受けやすいというエネルギーセキュリティ面での課題を抱えています。

 一方、我が国は水や太陽光など、再生可能エネルギーに活用できる資源については豊富であり、この資源から生み出されるグリーン水素は、燃焼させても二酸化炭素を排出せず、脱炭素化の推進に貢献するだけでなく、地域内で製造し利用することにより、エネルギー自給率を高める効果も期待されます。

 このグリーン水素の分野において、本県は、太陽光発電などの再生可能エネルギーの電力と水から水素を製造するパワー・ツー・ガス、いわゆるP2Gシステムを米倉山に完成させ、昨年6月から、ここで製造したグリーン水素を、県内の工場等へ輸送し、利用する社会実証を行うなど、最先端の取り組みが進んでいます。

 更に、本年4月からは、北杜市内のキッツ長坂工場水素ステーションにおいても、米倉山で製造した水素の利用を開始し、県産水素の新たな供給先に加わったと承知しております。

 この最先端の取り組みに、岸田首相も高い関心を示し、先月28日には本県へ視察に訪れたところです。

 本県が他県に先んじて取り組むP2Gシステムによって作り出されるグリーン水素は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにし、脱炭素社会の実現を目指す上で、様々な課題を解決する切り札になるものと私は確信しております。

 そこで、一層の活用が期待される県産水素の普及に向け、県はどのように取り組んでいくのか、御所見をお伺いします。

 

長崎知事 県が民間企業と共同で開発を進めてきたP2Gシステムについては、米倉山で製造した水素の供給先として、本年4月、キッツ長坂工場が加わるなど、順調に実績を積み重ねているところであります。

 また、自動車レースのスーパー耐久シリーズにおいて、3月の開幕戦に続き、先日、富士スピードウェイで開催された第2戦においても、トヨタの水素エンジンカローラの燃料として県産水素を供給しました。

 レース用水素の供給については、多くのメディアに取り上げられ、全国に向けて本県の水素事業への取り組みを発信するとともに、水素先進地としての価値を高めることができたと考えております。

 引き続き、米倉山のP2Gシステムで製造する、水素の供給先を積極的に増やし、水素をつくる・はこぶ・つかう仲間づくりを進め、水素利用の可能性を広げて参ります。

 更に、本年4月、我が国最大級のメガバンク等において要職を務められた、山梨県人会連合会の清水喜彦会長には、企業局顧問に御就任いただき、やまなしハイドロジェンカンパニーの業務への御参画を得ることによって、同社の経営力、県産水素の営業力強化を図っております。

 また、グリーン水素の普及拡大に向けては、供給コストが化石燃料に比べ高いという課題がありますので、先日来県された岸田首相に私自らが、その解決に向け、国を挙げての支援を要望したところであります。

 今後も、究極のエネルギーと言われるグリーン水素を造り出すP2Gシステムにより、燃料の脱炭素化と電化を推進し、カーボンニュートラル社会の実現に向け、本県が先頭に立って、取り組んで参ります。

12

高校における消費者教育の推進について

皆 川 次に、高校における消費者教育の推進について、お尋ねします。

 平成28年に施行された改正公職選挙法により選挙権年齢が18歳に引き下げられ、高校生にも社会の一員として責任ある行動が求められております。

また、本年4月1日には成年年齢を18歳に引き下げる改正民法が施行され、高校生が在学中に成年として扱われることとなり、保護者の同意がなくても一人で有効な契約を結ぶことが可能となりました。

 しかし、年齢としては成年となったとしても、多くの高校生は、社会経験や契約に関する知識が十分でないことから、安易な行動により消費に関する思わぬトラブルに巻き込まれる機会が多くなることが危惧されます。

 実際に、消費者庁が成年年齢の引き下げに合わせて4月1日から若者向けに3日間の期間限定で開設した特設ダイヤルには百件あまりの相談が寄せられ、そのうち約半数が10代から20代の若者からのスマートフォンの契約をめぐる消費者トラブルであったと承知しております。

また、保護者からも、「親の同意なしにクレジットカードを作成できるので心配」といった相談も多く寄せられているとのことで、私もそのような心配はごく当たり前のことだと思うところであります。

 

 こうした中、一人で契約が可能となる年齢に達する前の高校1、2年生の早い段階から、契約の重要性や消費者保護の仕組みなどに関する正しい知識を身に付けるとともに、消費行動における意思決定の重要性について理解を深めることができるよう、消費者教育を一層充実させることが肝要であります。

そして、これからは若者の消費者被害の防止・救済の観点だけでなく、社会の一員として責任を持って行動できる自立した消費者を育成する学びの必要性も、ますます高まっていくと考えます。

中でも、消費者トラブルについては、世の中の動きや仕組みを知る上で具体的な事例を通して学ぶことが有効であることから、外部の専門家や専門機関の協力を得ながら、消費者としての高校生の成長を社会全体で支えていくことが極めて重要であります。

 そこで、高校における消費者教育に今後県はどのように取り組んでいくのか、御所見をお伺いします。

 

教育長 消費者教育を推進し、在学中に成年を迎える高校生が、消費生活に関する正しい知識を身につけ、主体的に判断し責任ある行動ができるようにすることは非常に重要であります。

このため、全ての1、2年生が、令和元年度から県民生活センターの出前授業や消費者庁が作成した学習教材などにより、悪質商法や多重債務などを題材として、消費生活の現状と課題や消費者の権利と責任について学んでおります。

 また、社会の一員として責任ある消費者の育成が求められる中で、消費に関連して、生涯を見通した経済計画を立てる際に必要となる貯蓄や投資などの金融に関する教育へのニーズも高まっております。

 そのため、学校においては、将来の生活設計を考える上で必要なライフステージに関連付けた資産運用や、不測の事態に備えたリスク管理などについても学んでおります。

こうした消費者教育に関して、実際に消費者トラブルの相談に携わっている弁護士や金融商品を取り扱っている金融機関の方から、具体的な事例を踏まえた話を直接伺うことは、高校生や指導にあたる教員にとっても非常に有益であります。

 今後は更に、外部の専門家や企業などと積極的に連携を図って高校生が直面し得る最新の素材を提供し、自立した消費者として適切な意思決定に基づく消費行動ができるよう、消費者教育を推進して参ります。

 

 

このページのトップへ

本会議トップへ

山梨県議会議員 皆川いわお

〒400-0031 甲府市丸の内3-6-2

TEL 055-222-5313 FAX 055-233-3301

E-mail : minagawa@nns.ne.jp